2012年9月28日金曜日

富士登頂3

濃い霧に包まれて先がまるで見えない。
先まで目標にしていた七合目の灯りもどこだか分からない。
ただ既に登山道には入れていたので道を逸れる事はなかった。

しかしヘッドライトは一つしかなくちょっと歩きづらかった。
疲れているせいか、幻覚のようにいろんなものが見えてくる。

「あ、なんかライトが光ってる!」
って思うと葉っぱが反射してたり、
「あ、なんか文字が見える!」
って思って近づいて行くととただの木だったり。

こうして二人でずっと歩いたりしてると、普段下界では話さないようなことを話したりする。
仕事のこと、かみさんのこと、子供のこと、そして人生そのもの。
そういう意味ではいい時間だった。

そうこうしているうちに灯りが見え始めた。
すごい長い時間歩いた気がしたが、まだ2時間もたっていなかった。
結局午後8時前に7合目に着き、山小屋も心良く急な来客を受け入れてくれた。

しっかり晩飯も用意してくれたし、寝床も申し分なかった。
ただ、何故だか夜は一睡もできなかった。こんなに疲れているのに。
富士山にはやはりすごいパワーを感じる。
いい意味でも悪い意味でも。


翌朝5時に床を出て日の出を見ようとするが、厚い雲に覆われ日の出は見えないが、江ノ島はしっかり確認できた。あの先に家がある。
朝食をとってすぐ登り始める。
8合目までは2時間。

ちょうどそこが道を間違えた部分。
みんな口を揃えて「江戸屋(八合目の山小屋)裏をぐるっと回るように行けばそこが吉田口のルートだよ」って。
確認した。
間違いなく昨日も裏を回るように進んでいた。その手前に「吉田口はこちら」とていねいに矢印もある。

しかし、なぜかその回った先にしっかりとロープが張られていて、そこから下るようにしかなっていない。そこを下ると須走にしか行けないのだ。

海には目印がない。
乗る場所は自分で決める。
確実に、コンスタントに乗るためには自分自身で目標物を決めてポジショニングする。

山も同じであると、学習した。

また、ハセツネ出場を控えた自分にとっては十分なトレーニングができた。
そして大事に至らなかったことを感謝しなければならないし、なだなだ素人ながらもここ数年でお付き合いしている山の友達によって少しずつ山の知識やどんな道具がいいのかは教わってきたことも落ち着いて行動できた理由なのかもしれない。
最悪一晩野宿するだけの道具は持って行っていたから。

さあ、これから、仕事しよう。


-- iPhoneから送信