それから4年。
4年という歳月は、僕にとってどんな意味があったのだろう?
その結果がもうすぐわかる。
今年は春先に一時調子を落としたが、9月に入り、ようやくレース
ただ、昨年からバイクトレーニングを月間1300kmほど取り入
それまで、月間700km以上走っていたから、「これだけ走った
私達、アマチュアのアスリートは、多くのことと折り合いをつけな
それは当たり前のことだし、そのことを恨めしく思うことはないの
なにはともあれ、僕は今年もこのレースを走り、そして勝つために
スタートライン。
いつもどおり、最前列から少し下がった右端に立つ。
目を閉じて、レース中に起こるもっとも辛い場面を想像する。そし
僕がレース中に最もおそれているのは、辛さに対し、自分の心が折
長いレースでは、心を常に前へ向けていることはとても難しいし、
僕には心に刻んでいる一つの言葉がある。それは、鏑木さんの言葉
「ゴールまでに全ての力を出し切る」
これ以外に何があるだろうか?
順位やタイムは、相対的なものであり、自分と他の選手の関係性の
しかし、全力を尽くすことは唯一、確かなものとして自分の中に残
少なくとも僕にとっての「走る」ことの魅力や楽しみは、全力も尽
10月23日13:00、72kmの最初の一歩を踏み出す。
これから待ち受ける困難を知っているから、気持ちの高ぶりはない
前には30人ほどの選手がいる。
スターティングリストを見ていないので、詳しくわからなかったが
数kmのロードを経て、トップでトレイルへ。
5、6人のトップグループが形成された頃を見計らって、若干ペー
トレイルや自分の状態も含め、後の選手の息遣い、アップダウンの
拷問ともいえるアップダウンを繰り返し、第1関門の浅間峠に到着
すぐ後には1人の選手。
奥宮 俊祐。
驚きはしない。僕は彼の速さ、強さ、そして怖さを知っている。
尊敬している選手の1人だ。
この時点で、僕は最後まで彼とトップを争う覚悟を決めた。
ほんの少しの疲れを感じ、三頭山山頂へ。
ここからは、標高的には下り基調になるが、実際には細かいアップ
さらに雨の影響でトレイルが少しスリッピーで思いのほかペースが
後続との差を広げることはできたが、実は予想以上に脚にきていた
簡単には勝たしてくれないだろう。どんなレースでも楽勝なんて有
第2関門の月夜見峠。
あいにく濃い霧に覆われ、夜空に月は見えないが、そのかわり、エ
ここから、さらにペースが落ちる。
例年、御前山あたりで一気に気温が下がり、オーバーヒートした筋
コースレコードが難しくなり、辛さに負けそうになるが、あの言葉
大岳山は最後の大きな上り。
ここまでほぼ1歩も歩くことなくきたが、ここの鎖場だけは足だけ
僕は下りが下手だ。だから、上りも走ってタイムを稼ぐしかない。
いよいよ、金比羅尾根に入る。
2007年、奥宮選手とのデットヒートの中で感じた、山との一体
残念ながら、今年は感じることができなかった。自分はいろいろな
いつの日か再び、心の鎧を脱ぎ捨てて、山と純粋に向き合いことが
トレイルを抜け、住宅街が見える。僕はこの瞬間が大好きだ。
結果の良し悪しで喜びの度合いは変わるが、この安堵感はいつだっ
「もう走りたくない」そう思ってゴールできることが一番の幸せな
また、ここへ戻ってきた。
誰よりも早く。
心の中で「ただいま」と一言呟いた。
過去は変えることができない。
けれど、「今この時」を精一杯生きれば、その過去に意味を持たせ
この4年間、いろいろなことを経験し、喜びや苦しさも味わったが
今僕は、自分にとって4年という歳月は、必要な時間だったと自信
これからどんな未来が待っているのだろう?
未来を切り開く力も、「今この時」にかかっている。
目指すべき山の頂は見えない。
しかし、山頂へ向かって1本の険しいトレイルが延びている。
どうやら、この道を走り続けるしかなさそうだ。
2011年秋 トレイルランナー 相馬 剛